大阪市での支援費制度の状況と課題
NPOちゅうぶ 石田 義典さん
はじめに 〜今年に入ってからの動き〜
いよいよ、支援費制度が4月1日にスタートしました。在宅、施設も含めほとんどの障害者施策がこれまでの「措置制度」から、利用契約に基づく「支援費制度」に変わることになりました。支援費の理念としては「利用者=障害者主体による選択や契約」「利用者と事業者との対等な関係」「ニーズに基づく支給決定」などが掲げられていました。
ホームヘルプサービスなど、これまでよりサービスが充実するのではないかと期待されていたのですが、これを根底から壊してしまうような動きが突然出てきました。今年の1月に厚生労働省が突然、介護サービスの上限案を出してきたのです。このことはマスコミでも大きく取り上げられたのでご存知だと思いますが、ここで出てきた数字が「身体障害者で月120時間、重度の知的障害者で月50時間、中軽度の知的障害者等で月30時間」というものでした。厚生労働省はこの数字はあくまで地方自治体にお金を配るための基準であって、上限ではないと言っていました。しかし良く聞いてみると、やはり国がお金を出す上限であり、この時間数以上は全額、市町村が出してくれたら良いというものでした。財政に余裕のある市町村はほとんどないので、やはり上限になってしまうことは明らかでした。月120時間、つまり1日4時間以上介護の必要な障害者は、地域で生きていけなくても仕方がない、という宣告だったのです。決して大げさではなく「地域で生きる重度障害者にとっての死刑宣告だ」と感じた全国の障害者が東京の霞ヶ関の厚生労働省前に毎日何百人と集まりました。しかも知的障害者にとっては更に厳しく、月50時間=1日1.7時間しか必要性を認めていなかったのです。これは移動=ガイドヘルパーも含めた時間ですからまったく信じがたいような低い数字なのです。
市町村にとっても、すでに4月からの予算を作った後で急に出されたことだったので、見直しを求める意見書が続々と厚生労働省に寄せられました。この問題は全国の大きな4つの障害者団体(DPI日本会議、JD=日本障害者協議会、全日本手をつなぐ育成会、日身連=日本身体障害者団体連合会)が最後まで一緒に闘ったこと、マスコミも全面的に応援してくれたことなどもあり、1月28日の全国支援費担当課長会議の前日に決着しました。ここでは「それまでのサービス水準を守ること、国の基準時間数は利用者一人一人の上限ではないこと、今後の制度のあり方について当事者を入れた検討委員会を作ること」などが確認されました。もともと準備が遅れていた上に、上限案をめぐる混乱もあり、実際に支援費で利用できるサービス時間数などを決める支給決定はギリギリまで遅れました。大阪市では3月末に出されました。大阪府下はどこも同じような状況で、4月にずれこんだケースもあります。本来であれば支給決定が2月に出され、事業者との契約に必要な受給者証が3月初旬には出されるはずだったのです。サービスを提供する事業者のリストも3月段階ではきちんとそろっておらず、実際に介護派遣を受けながら4月に入って契約するケースも多かったと思います。
支援費になって、結局どんな制度になったのか、内容がよくわからないままの利用者もたくさんいると思われます。全体的に見ると準備は半年以上遅れています。本当にドタバタの中でのスタートでした。
大阪市ではどんな支給決定がなされたのか?
大阪市では基本的にはこれまで受けていたサービスの時間数などを下げないという原則で支給決定がなされました。ホームヘルプサービスや全身性障害者介護人派遣事業、ガイドヘルパーなど、これまで区役所で決定されていた時間数がほぼそのまま支援費でも出されています。
全身性障害者介護人派遣事業は多くの人が月153時間で決定されていましたが、この内、生活部分が3分の2の102時間、外出部分が3分の1の51時間という基準があったので、支援費では日常生活支援が102時間、移動が51時間となっています。全身性障害者介護人派遣事業の利用者は基本的には日常生活支援という長時間介護の類型になっていますが、利用時間数の少ない人の中で本人が希望すれば身体介護・家事援助+移動という決定もあります。
知的障害者と視覚障害者のガイドヘルパーに関しては、そのまま月51時間という決定です。
ホームヘルプに関してはこれまでは週単位での決定でしたが、支援費は月単位になるので、計算としては週の時間に約4.3をかけた数字です。
例えば……週4時間→月18時間。週8時間→月35時間。週12時間→52時間。週18時間→78時間。
これまで同様、家族が同居する場合は月52時間、単身の場合は月78時間が基準となっています。
ホームヘルプサービスは、その中で内容に応じて身体介護と家事援助の時間数が決定されていましたが、支援費でもその時間数に応じた決定になっています。例えば週8時間で、その内身体介護4時間、家事援助4時間の場合、支援費では身体介護が月18時間、家事援助が月18時間、合計36時間の決定です。
ホームヘルプと全身性障害者介護人派遣事業を両方使っていた人は、移動は51時間ですが、生活部分に関しては「日常生活支援」と「身体介護・家事援助」は両方を使うこと(併用)は認められていないため、日常生活支援の類型の時間数になります。実際には全身性障害者介護人派遣事業の生活部分102時間にホームヘルプの時間数を上乗せした時間数となります。例えば、全身性障害者介護人派遣事業と、ホームヘルプサービス週4時間を使っていた人は、日常生活支援が102時間+18時間=120時間です。
ただ、これまでニーズがあっても、例えば社協などのヘルパーが不足しているなどの理由でホームヘルプサービスを利用できなかった人は、これまで以上の時間数が決定されているケースもあります。
日常生活支援では、全身性障害者介護人派遣事業から移動の51時間を引いた102時間、ホームヘルプサービスの月78時間を合わせた180時間が、とりあえずの最大の時間数となります。移動の51時間を加えると231時間の決定となります。
実際の決定状況はまだ集約されていませんが、区役所によってずいぶん違うようです。事務的なミスもあるようなので、必要があるのに時間数などを引き下げられた場合は、すぐに区役所に行って相談しましょう。
大阪市で残されたいくつかの課題
支援費は「国の考えや具体的な情報が直前になって変わったこと」「大阪市では全身性障害者介護人派遣事業やガイドヘルパーなどの利用が他の市町村に比べ非常に多いが、利用の実態がつかめていないこと」などから、とりあえず「これまでのサービス水準を守る」という以上に見直しなどはされていません。
さまざまな課題が解決されないまま引き継がれています。一番大きいのは、実際のニーズに基づいた支給決定になっていないということです。移動の51時間や日常生活支援の最大180時間は上限ではなく基準であり、今後見直されることになっていますが、一人一人の状況に応じて細かく決定するシステムができておらず、これまで通り大ざっぱな決定になっています。
実際にもっとたくさん時間数が必要であっても、基準の数字以上には決定されていません。
逆に実際にはもっと少ない時間数しか要らない人でも、移動は51時間、日常生活支援は102時間となっている人が多く、「今は必要ないけど将来たくさん必要になるかもしれないから、無理にでも使ったことにしないといけないのでは?」と考えている利用者や親も多いようです。
「実際に必要な時間数が増えれば決定時間数も増やす」「逆に必要なければ減らす」というシステムにならないと、画一的な決定が続いてしまい、予算的にも膨れ上がってしまいそうです。
他にもたくさん課題は残っています。主なものだけ取り上げます。
利用者自身が支援費の仕組みなどを理解しているでしょうか?
〜1月以降具体的なことがバタバタと決まっていますが、利用者にはほとんど説明されていません。受給者証の管理や事業者との契約も利用者自身が行なうことが大切です。親や作業所などの関係者が本人にきちんと説明しないまま代理していないでしょうか? また支援費では毎月事業者にいくらお金が支払われたかを事業者は利用者に知らせる義務があります。様々な情報を利用者自身は知る権利があるのです。区役所に聞いても分からないことが多いと思いますが、市町村障害者生活支援事業などを受託している障害者団体に聞いてみるのも良いと思います。事業者の状況は?
〜ニーズに見合った事業者が確保できているのかどうかまだ分かりません。大阪市ではこれまで障害者が自分で介護者を確保するいわゆる「自薦」方式が多かったのですが、実際にどう事業者を確保できたのかは集約できていません。最終的な受け皿としての社協は3月末になって「自薦」を受け入れることになりましたが、あくまで民間事業者に移行する緊急措置で長くて2年まで。介護者も月65時間までしか活動していない人に限られています。作業所の送迎
〜国は3月になって作業所も含め通年かつ長期にわたるものは支援費では利用できないと言う厳しい通知を出しました。大阪市では作業所(障害者福祉作業センター)の送迎は「移動」でOK、小規模通所授産施設に関しても「やむを得ない場合」としてOKです。移動の2つの単価
〜受給者証では「移動中心51時間(身体介護あり)」または「移動中心51時間(身体介護なし)」とありますが、どう違うのかははっきりしていません。利用者の中には「身体介護なしだからトイレ介護などは頼めないのか」と遠慮してしまうケースも考えられます。しかし実際に受けられる介護内容に違いはなく、事業者に入る金額が違うだけなのです。線引きの基準は市町村によってまちまちですし、大阪市でも何度か変わっています。最終的には「両上肢1級+両下肢1級」または「寝返り=体位変換、食事、排泄の3つとも全介助」となっています。しかし実際の認定は区によってかなり違っており混乱しています。そもそも移動の中にこうした線引きがあいまいで金額の差が2倍以上ある2つの単価があること自体がおかしいのですが、今後もこの問題については混乱が続きそうです。
〜支援費についての相談は、お近くの自立生活センターにお問い合わせ下さい〜
大阪市障害者生活支援事業連絡協議会 加盟団体一覧(ピア大阪は省略)
| 加盟団体 | 郵便番号 | 住所 | 電話番号 |
| 自立生活センター・ナビ | 546-0042 | 東住吉区西今川2-3-8 | 06-6760-2671 |
| 自立生活センター・まいど | 558-0002 | 住吉区長居西1-9-12 | 06-6609-3133 |
| 自立生活センター・OSAKAぽらんぽらん | 556-0012 | 浪速区敷津東3-6-10 | 06-6649-0421 |
| 自立生活センター・おおさかひがし | 536-0024 | 城東区中浜3-17-17 | 06-4258-1122 |
| 自立生活センター・Flatきた | 533-0004 | 東淀川区小松4-13-21 | 06-6325-9992 |
| 自立生活夢宙センター | 559-0011 | 住之江区北加賀屋1-3-15 | 06-6683-1053 |
| 自立生活センター・あるる | 534-0014 | 都島区北通1-22-26 | 06-6928-9981 |
| 地域生活支援センター・えんじょい | 532-0011 | 淀川区西中島7-12-23 | 06-6101-5031 |
| 大阪障害者支援センター・つるみ | 538-0051 | 鶴見区諸口5-9-39 | 06-4257-8877 |
| 自立生活支援センター・ポカポカティ | 557-0025 | 西成区長橋3-2-27 | 06-6562-5800 |
| 障害者生活支援センター・いきいき | 540-0033 | 中央区森之宮中央2-13-33 | 06-6942-1795 |
| 自立支援センター・エポック | 544-0015 | 生野区巽南5-6-5 | 06-4303-0331 |
| 障害者自立生活センター・スクラム | 551-0002 | 大正区三軒家東4-8-26 | 06-6555-3509 |