障害者自立支援法、
与野党とも大幅な見直しを検討




NPOちゅうぶ
 石田 義典(いしだ・よしのり)さん
イラスト:車椅子の男性がパソコンで作業している様子  10月25日、テレビ番組の報道ステーションで「障害者自立支援法、現場の悲鳴」として以下のような特集が組まれた。「名は体を現さない法律・・施行から1年半がたった障害者自立支援法。この法律は障害者が企業で働くのを支援し、地域での自立を図るとしていて、その代わりに福祉サービスの費用の1割負担が盛り込まれた。就労先などの受け皿が整わない中での導入に当初から反対の声が相次いでいたが、今、この法律が当初の理念とはかけ離れ、障害者の生活基盤を揺るがす事態となっている。今回番組では、障害者が仕事をするために集う作業所を取材。費用負担に苦しむ障害者たちの現実を伝える」

イラスト:5人の男女。真ん中に車椅子の男性  障害者自立支援法は2006年4月からそれまでの支援費制度に代わる制度として始まり同年10月にはホームヘルプなども全面改編された。精神障害者を組み込み、就労支援や地域移行をうたい文句としては強調するものだが、実際には原則1割負担、サービス体系の全面的な改編、施設系事業者への報酬の月額払いから日額払いへの変更、報酬単価の引き下げなど悪影響ばかりが実感される法律だと言える。マスコミの報道姿勢も厳しい論調のままだ。

 当初から大きな反対と不安の声が 全国で沸き起こり、昨年10月には厚生労働省前の日比谷公園(ひびやこうえん)に1万5000人という障害者運動史上最大規模の人が集まった。政府も大幅な見直しを行い、事業者への補助、利用者負担上限額を4分の1に下げるなどの措置を打ち出した。1200億円という大きな金額であり、政府からすれば厳しさは相当緩和されるはずだったが、法律や内容の枠組みそのものは何も変わらず抜本的な見直し、つまりは障害者自立支援法の廃止を求める声の大きさは変わらなかった。1200億円と言っても利用者負担軽減には240億円のみの配分で残りは施設などの事業者への補填や整備助成。 イラスト:男性の肘をつかんでいる白状をもっている視覚障害の男性 例えば事業者に入る報酬が前年度と比べ90%を下回ればその分を保障するという補填だが、実際には二重三重の制約があり、重度訪問介護に限れば実際に補填された事業者はほぼ0だ。1200億円がどう使われているのかも不透明だ。
 単価ダウンと日払い報酬の影響は極めて大きく職員、ヘルパーが辞めていくが求人しても人が来ない。給与の低さと「福祉に夢が持てない」ということでは高齢者福祉などでも共通しており、人材不足は福祉業界全体で起きている。資格制度はますます厳しくなるのに給与アップは望めず事態は相当深刻だ。また移動支援(ガイドヘルプ)など社会参加に必要な施策が市町村事業になったが国からの補助金が削減される中、サービスの切り下げが起こり、市町村格差も進行している。危機的な状況は改善されていない。

 こうした中、10月30日、日比谷公園(ひびやこうえん)で集会が行われ6500人の障害者、支援者が集まった。今回は会場が日比谷野外音楽堂(ひびややがいおんがくどう)のみで4000人規模の設定だったが、7月の参議院選挙で与党が惨敗、参議院では民主党が第1党になったこと、福田首相も障害者自立支援法の抜本的な見直しを明言する、民主党が1割負担廃止法案を出すなどの動きを受け、予想以上の人が集まり、並行して厚生労働省前でもアピール行動を行った。

 今回の集会には 昨年と違い与党議員も含め全党が参加した。野党は民主党の出した見直し案(応益負担廃止法案)に基本的に賛同、与党は自民党と公明党でプロジェクトを作り検討中との発言。自民党と公明党では主張が若干違うが、与党としてはおおよそ次のような内容だった。「みなさんの理解を得ずに法律を作った。『私たち抜きに私たちのことを決めるな』という言葉を胸に秘め、暖かい制度になったと言ってもらえるようにしたい。応益か応能か、ということについては今は応能に近い内容で、収入のある人はちゃんと払えるようにしたい。現在は家族を含めて負担があるが本人のみの収入としたい。そうなればほとんどが非課税世帯になる。またホームヘルプなどの障害福祉サービスと補装具、自立支援医療と合算での負担上限にできないか。人材不足の問題ではヘルパーは給与が月18.8万円、一般労働者33万円と比べ安い。日払いか月払いかの問題があるが、日払いだと利用者が事業者を選びやすいという利点もあり、報酬単価を上げることで人材不足を解消したい。・・・重度訪問介護の単価アップや移動支援、コミュニケーション、相談などの地域生活支援事業への補助を行い、新たな地域格差が起きないようにしたい」また応益負担については「厚生労働省の考えはちょっと乱暴だった」という発言もあった。年金などの所得保障がまったく手付かずの中で「誇りを持って1割を払ってもらえる国にしたい」などの発言にはさすがに大きなヤジが飛んだが、与党としては法律の基本的な枠組みは変えないが、しかしかなり踏み込んだ見直しをしないといけないという認識のようだ。負担上限については1割負担の原則は残しつつ4分の1から8分の1へ、という案も検討されているようだ。

 野党からは応益そのものが問題であり、こうした事態が起こることは当初からわかっていたこと、法律の哲学自体が間違っており、きちんと出直すべきだという意見が続いた。具体的には参議院で民主党案を通すことで一致し、衆議院でも議論すること、ただそのためには現在の国会はテロ特措法などで動かなくなっており、国会の会期延長をする必要がある。共産党からは独自アンケートで月1万円以上負担が増えた人が約6割になることや「応益負担」廃止を求める声が9割にのぼったことなどが出された。民主党からは今後、所得保障、障害程度区分、利用負担のあり方などを中心に議論し総合福祉サービス法作成につなげていくとの発言もあった。

 民主党からは10月28日、 障害者自立支援法改正法案(障がい者応益負担廃止法案)が参議院に提出されている。主には@定率一割負担の廃止(当面、以前の応能負担に戻す)、A障害児・者福祉サービスを維持するために必要な支援。@のために150億円、Aの事業者への100%保障のために200億円が必要としている。合わせて7つの緊急提言を行っているが、内容は@所得保障の実現、Aサービスの利用抑制についての緊急調査と対策、B障害程度区分認定の見直し、C事業所への従来報酬の100%保障、D地域生活支援事業の実態調査(ちょうさ)と自治体格是正、E精神科病院の退院支援施設の新規設置凍結、F自立支援医療の負担軽減

イラスト:男性の肘をつかんでいる白状をもっている視覚障害の男性  ホームヘルプ事業の人材確保については 地域で生活する重度障害者への派遣を主に行っている団体へのアンケートから厳しい実態が改めて浮き彫りにされた。1、重度訪問介護を積極的に引き受けた事業所ほど時間単位あたりの単価が低くなる傾向が明らかになった。2、このため61%の事業所で賃金の引き下げを行わざるを得なくなった。3、常勤職員の離職率は27%で、介護保険分野の1.6倍、全産業の2倍に当たる高い率となっている。また、「ヘルパーの勤続年数は3年以内」と回答した事業所は8割にのぼった。 イラスト:男性の肘をつかんでいる白状をもっている視覚障害の男性 4、これらの深刻な人材不足の状況により、76%の事業所が重度訪問介護を必要とする障害者を新たに受け入れられなくなっていると答えている。単価は重度訪問介護(かいご)は1600円〜1800円、介護保険の2000円〜4000円比べても低)く、知的障害者や精神障害者に多い家事援助単価は1500円とさらに低額だ。(詳しくはJIL(ジル)やDPI(ディピーアイ)などから「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会」ホームページを検索して下さい。

 また大阪府からは 「障害者自立支援法制度の円滑な運営に関する重点要望」として府下の実態調査の結果とあわせかなり抜本的な見直しが要望された。ここでは障害者のサービス利用抑制や事業者の減収、地域生活支援事業での財源不足などのデータと共に施設等の報酬を日額払いから月額払いへ、報酬単価アップ、移動支援を国事業へ、グループホームの世話人を6:1から元の4:1へ、夜間支援体制をすべてのグループホームへ、障害程度区分認定基準の見直しなど法律自体の抜本的な見直しにつながる要望が出され、一見、障害者団体の要望かと思うくらいだ。(ホームページは大阪府→障害者→障害保健福祉室:ニューストピックスと検索して下さい。)

 本格的に始まってまだ1年の障害者自立支援法。良くも悪くも政治の動きに大きく影響されている。大阪市でも全庁的な予算カット案が出されているが、どこにどうお金を使うのか、基本的な考え方と共に財源確保での駆け引きも活発化しそうだ。国や自治体の動きに目が離せません。2007年10月31日)


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