「巨木を追う」第8弾
リストに載っていない白い巨木
ぴあふれんず 西村 幸一
はじめに
巨木探偵社ファンの皆様、「ピア大阪ニュースドリーム」編集スタッフの方々及びニュースドリーム読者の皆様、こんにちは。編集スタッフの方々、通信のリニューアル、おめでとうございます。読者の皆様、引き続き「巨木を追う」をよろしくお願いいたします。
駒つなぎの楠とは?
さて、今回取り上げます巨木は、大阪市都島区にある「駒つなぎの楠」です。地下鉄谷町線都島駅より徒歩5分のところにある、幹周り9.8m、樹齢1000年の大楠です(ちなみに駒とは馬のこと。昔のお侍さんが、馬をつないでおくのにこの木を利用していたようです)。
これほど見事なスケールであるにもかかわらず、その存在はあまり知られていません。我々巨木探偵社が所在を確認できたのも、つい最近のことです。
こうした知名度の低さには、実は訳があります。かつてはこの大楠、大阪府天然記念物第1号の指定をうけた名木でありました。しかし戦災にあって枯死状態となったため、指定が取り消されてしまったのです。
そして現在、天然記念物のリストには載っていない、知る人ぞ知る巨木となっているわけです。
哀しい巨木との出会い
たしかに悲痛な姿でした。葉や小枝などの彩りが一切なく、木肌までもが全く無くなってしまったその様は、大樹というよりも、まるで巨大な白骨のオブジェ。この巨木の存在もまた、悲しい歴史のモニュメントの一つと言えるのでしょう。
僕の身の丈ほどの石柱で囲われていたため、今回は幹への身体接触を断念し、根元に濱村さんのカバンを置いた写真を撮って、調査を終えることにしました。
新芽の発見!
数日後、現像した写真の中に、ある一部を発見した僕は興奮していました。巨木の先端、巨人が天に突き立てたその指先に、マリモのような小さな物体が見てとれたのです。
「死」とは二度と会えないということ、しかしこの丸い物体は何だ?新芽ではないのか!
実は枯死などしていなかったのか、それともやはり一度は枯死していたのかは分かりません。とにかく、この場所における生命の営みは、途絶えてはいなかったのです。僕は巨木という生命体の底力に感動すると共に、改めて生命について考えさせられました。
「命のリレー」について哲学する
「倒木更新」という言葉があります。暗い森の中で、倒木によってできた明るい場所が、適度な湿り気と養分に恵まれたその倒木の上で芽生えた生命によって、受け継がれていく現象です。伝統的な園芸手法である「挿し木」は、現代風に言い換えればクローン技術でしょう。これらの樹木にまつわる文化は、僕に「リレー」という言葉を思い起こさせます。過去というバトンが、現在という走者によって、未来というチームメイトにパスされていく一連の流れ。走ることを、さわやかに意味付けることのできる才能をもった言葉だと思います。
生命を考える時、僕らはつい、自分個人の人生の尺度で発想してしまいます。死んだら終わりとか、○○してナンボとかって。そんなの、あまりにもちんまい感じがします。始まりと終わりが分からないのだから、そもそも生命の不思議なんて、捉えようのないものです。どうとでも思える訳です。ならば、いっそのこと、豊かなイメージを膨らませてみたい。そのための種子のいくつかは、結構、森に落ちているような気がしています。
おわりに
ひからびたような巨木から、潤いを得ました。それでも世界は続いていく。そう想像させてくれた白い巨木に感謝しています。
では、次回をお楽しみに。