知的障害のある生徒の高等学校受入れに係る
調査研究校について

西尾さん画像
障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議  西尾 元秀さん

 知的障害のある生徒の高等学校受入れに係る調査研究事業が始まってから、今年で3年目を迎えた。研究期間は「概ね5年」なので、今年は中間報告が出されることになる。
 今回は調査研究校の中でも特に「選抜」に絞って現状・課題を記したいと思う。

調査研究事業までの流れ 〜知的障害をもつ生徒が一般の高校へ行く壁〜
 大阪では共に学ぶ教育が一定進んでおり、障害児(身体・知的等の種別によらず)が地域の小・中学校へ就学することは、本人・保護者が望めば可能な地域が多い。市によっては「基本的に普通学校へ進むが、希望すれば養護学校へも行ける」というシステムになっているところもある。
 小・中学校と地域の仲間と共に学んだ、障害当事者・保護者からすると、現在多くの生徒が高校へ進学することを考えれば、高校で学びたい、という思いを持つことは自然だと言える。しかし高校進学するためには、入試選抜という壁が立ちはだかっている。
 入試は障害者・健常者問わずに壁ではあるが、知的障害をもつ生徒にとっては、決定的である。大阪の公立高校は、内申書と入試当日の点数で合否が決まるが、内申書というのも中3の定期テスト・実力テストの成績が非常に大きなウエイトを占めることを考えれば、「テストで点数が取れない生徒が公立高校へ進学するのは非常に難しい」のが現状である。
 教育委員会は以前から「入学者選抜では障害をもつことで不合理な取り扱いがされないようにする」と言っているが、私達は「現状のシステムは、知的障害をもつ生徒には非常に不合理な制度であり、差別である」ということを主張してきた。入試選抜は要綱でこと細かに定めがされており、それを知的障害にも考慮したものに変えよ、という取り組みを続けてきたが、この壁も非常に固く、いくつかの文言を変えさせただけで抜本的に変えることはできていない。
 このような状況の中で調査研究事業(とそれに伴う調査研究校)が始まったのであるが、府教委とは「これは研究校以外の学校でも受入れを進めるためであり、決められた研究校に知的障害をもつ生徒を囲い込むためのものではない」ということを確認している。

調査研究校の選抜の現状
選抜については、志願者の要件として、
また募集人員については、
さらに選抜の資料としては、


過去3年間の調査研究校の校名、および受験者数と合格者数は以下の通りである。

高校名 2001年度 2002年度 2003年度
- 受験者数 合格者数 受験者数 合格者数 受験者数 合格者数
西成 2 2 6 2 4 2
阿武野 4 2 8 2 9 2
柴島 4 2 5 2 3 2
松原 3 2 8 2 5 2
園芸 - - - - 13 2
※桜宮 - - 3 2 2 2
合計 13 8 30 10 36 12
※桜宮は大阪市立


 府立については、調査期間内で学校数は今後増えない見込みであり、入学者数についても2名が変わらない可能性もある。
 市立については校数については増やすよう強く要望している。また入学者数については府に横並びと考えられる。

調査研究校の今後の課題
 現在、学校教育審議会で中間報告に向けて議論が進んでいるところであり、今後については不明な点もあるが、敢えて今「調査期間終了後は一定の制度化がされる、けれども希望者全員が入れるほどの制度は一足飛びにはできない」という仮定で話を進めたい。
●選抜の資料等について

 小・中学校でどのような考えで学校生活を過ごしてきたか、ということをもっと必要な条件にするべきである。保護者によってはこの子に合った教育をということから、養護学級等への抽出を強く希望する人もいるが、この制度は元々、小・中学校で共に学ぶ教育を経た上で高校進学を目指す生徒のためのもの、という根本はおさえなければならない。
 従前からの連携の深い中学校、というのは情報交換等に必要な部分であるが、連携の内容をもう少し精査し、新たな高校と中学校の連携をとっていけるよう在り方を示す必要がある(これは校数を増やす上でも必要)。
 またコミュニケーションが図れる者、というところは、障害の重い・軽いという要素が入りこまないように注意することが必要である。
 さらに言えば知的障害も多様であり、一般入試で全く点数が取れないという生徒ばかりではない。制度の主旨を考えれば、現在は一般後期試験の前に行っている調査校の選抜を、後にするか、もしくは調査校の合格者も一般入試を受けられるようにするような工夫も必要である。
●校数・人数について

 現在、市立含めて6校であるが、これは少なすぎるので増やす必要がある。とりあえずは共に学ぶ教育が進んでいる地域には多く配置する必要があると思われる。
 また入学者数も現在実質「2名に限定」されている。調査研究校ではコーディネーターという役割の教員を1名配置することになっているが、ここの人手を厚くしてそれに伴う形で入学者数も増やすのが現実的か。

その他の課題など
 調査研究校以外でも知的障害をもつ生徒が、高校で学ぶ例は過去から遡ると多々あるが、その多くは定員割れで受験者全員入学したというものである。しかし定員内であっても、ある程度の点数がなければ、入学を拒否する高校もあるというのが現実である(毎年1例ずつぐらいはある)。当面この定員内不合格を出さないよう、教育委員会に働きかけを続けているが、それも含めて現在ある一般入試システムそのものを変えていく必要がある。

最後に
 「調査研究校というのは、知的障害者間に新たな選別を生むだけではないか」という批判が、特に他府県の方々からされていたりするらしい。これは全く間違っているとは思わないが、正しいとも思えないのが率直な思いである。調査研究校の制度化も含め、現在はまだ進行中であり、良いか悪いかの判断はまだできない。
 障害児の教育を取り巻く、国・府の動きにも注視しつつ、また共に学ぶ教育の在り方の議論や、高校入学への運動的な広がりを作ることをこれからの課題として取り組んで行きたいと思う。




目次に戻る

TOPページに戻る