2003年度 第3回 ピア大阪人権講座報告
障害者と性
〜心が生まれる瞬間〜
講師 吉田知栄美さん (自立生活センター Com-Support Project)
横須賀俊司さん(県立広島女子大学 助教授)
日時 2004年3月27日(土)13:00〜17:00
場所 早川福祉会館 参加者 77名
「障害者と性」をテーマとした今回の講座には多数の参加申し込みがあり、性の問題への関心の高さを物語っていた。
講座は二部構成とし、第一部は全体講演会、第二部はテーマを「男性の性について」「女性の性について」に分けた分科会とした。ちなみにこの分科会は、申し込み者の性別で分かれるのではなく、興味のある方のテーマに参加してもらうということである。
講師には、県立広島女子大学助教授の横須賀俊司さんと、福井市の自立生活センターCom-Support Projectの吉田知栄美さんのお二人を招いた。
全体会 〜吉田知栄美さん講演〜
第一部の全体会で、吉田さんは自らの経験を赤裸々に語り、女性の立場からの意見を述べられた。
吉田さんは脊髄性の筋萎縮症、かつ両足の股関節脱臼のため股が開かず、挿入時、痛くてなかなか行為に到らないそうである。「障害をもっている場合、セックスがうまくいかなかったり、障害によってはできないことが多々あるため、コンプレックスをもってしまうことが多いが、正しいセックスの形などはないと思う。様々な触れ合い方や楽しみ方があっていいのではないか」「障害者は一人の男として見られない、女として生きられないと思わせてしまっている社会に、間違った情報や理解、介助やセックス・ケアなどいろんな問題がはびこっているように感じる」と話された。
また「マスターベーションに介助が必要な場合は(基本的には同性の)介助者が手伝ってもいいと思う。しかし利用者が『女性(あるいは男性)のほうがいい』と求めたならば、それは快楽の要求であり、介助者の同意も無くその部分を隠して介助させるのは仕事の上で契約外だ。介助者が安定したサービスを提供できる環境を考えていくことも当事者の責務ではないだろうか」「障害者だから仕方ない、異性介助もアリよ、というのはおかしい」という意見を述べられた。
最後に、「恋愛の感情は、自立生活への大きなきっかけになると思う。ぜひ皆さんも多くの人に出会って、どんどん恋愛してほしい」と語られた。
全体会 〜横須賀俊司さん講演〜
横須賀さんの講演では、参加者から「異性介助」「障害者へのセックス・ケア」「売買春の是非」などについて話してほしいとの希望があった。
異性介助の是非については、横須賀さんは両者の合意を大前提として、異性介助賛成派だという。「異性介助がいけないとされているのは、社会の中に親密な身体接触を伴う行為はしてはいけないというルールがあるからではないか。『同性介助ならばいい』という考えは、同性愛者達には当てはまらない」というのが横須賀さんの意見だった。
「オランダでは障害者へのセックス・ケアが合法化されているが、日本でそのようなところはないのか?」との質問には、「現在の日本では、性的サービスの提供は風俗関係しかないと思う」と答えられていた。
単純売春(自分の意思で自発的に売春を行うこと)については「『いいことである』とは言えないが『悪いことである』とも言えない」というのが横須賀さんの個人的な意見だった。「『性の商品化はいけないこと』とされているが、資本主義は何でも商品化するのに、なぜ性だけ商品化してはいけないのか疑問である」という意見だった。
分科会 〜男性の性について〜
第二部の分科会で、横須賀さんには男性の性について担当していただいたが、主に売買春の是非についての話し合いとなった。
会場から「段階論として、まずは障害者から売買春の合法化を」という発言があったが、それに対し「日本にそういう制度は必要ないのでは。障害者でも、介助者を連れて普通に風俗に入れればよい話だと思う」という意見も会場から出た。
「施設にいる重度障害者は風俗に行くことすらできない。機会が平等に与えられていない」という声や「『自分が生きているうちに障害者の息子に女性を抱かせてあげたい』と親から相談を受けて困った」という声もあった。
「全ての要求が叶えられるはずはない。我慢することも必要ではないか」という意見もあったが、「我慢を美徳とするのではなく、障害者も健常者も、誰でも思ったことが叶えられる社会をつくっていくのが理想ではないか」という意見も出た。
分科会 〜女性の性について〜
吉田さんの女性の性についての部門では、話し合いは主に異性介助の問題に終始した。異性介助について、肯定意見と否定意見が出た。「難しい問題で、わからない」という人もいた。
肯定派からは「男性が女性に風呂介助などをしてもらっても、大人であれば、女性に対して『やってはいけないこと』はわかるはずだ」「お互いイヤでなければ異性介助もアリだろう」などの意見が出た。
否定派からは「やはり基本は同性介助」「女性のヘルパーが男性利用者の介助に入った際、セクハラ的なことを要求された、という話を聞いたことがある」などの意見があった。
「男性が女性にセクハラ的なことをするのは仕方のないことだ。男はいくつになっても色気が残っている。男のへそから下には人格はないのだ。きれいごとではすなまいのだ」という施設職員からの発言もあった。
〜参加者の質問より〜
「(通常の男性・女性としての役割が果たせない、相手を満足させられないなどの)コンプレックスの解消には、どうしたらよいのか?」との質問には、「ありのままの自分を受け入れ、承認してくれる相手、仲間を見つけるとよい」と横須賀さんは答えられていた。
「セックスがうまくいかない。相手が長続きしない」という悩みに、横須賀さんは「当事者同士、どうしてほしいとか、どうしたら痛いからダメだとか、話し合って解決していかれては?」とアドバイスされていた。
参加者には、障害当事者はもちろん、当事者から相談を受けて悩んでいる施設職員や障害者の親も多かった。