聴力障害は情報障害です。
情報が足らんよ!
ピア大阪 ピアカウンセラー(聴覚障害者)
吉川 昭作さん
聴覚障害の原因は不明
私は生まれときから聴覚に障害をもっていたわけではありません。昭和14年に生まれ、戦争を体験した世代です。終戦の2年後、8才のときに食料不足で空きっ腹でフラフラしていて、後で高熱から次第に耳の聴力を失いました。原因は今でも不明のままです。当時の医学では不治とされました。それ以前に、医者に掛かるお金より食べ物の方が大事な時代でしたからね。
以来、今日まで56年間は聞こえないままで人生を送ってきたわけです。自分の子供が産まれた時に、子供の泣き声や言葉を聞いたことがありません。悲しいと言えば、悲しい障害かもしれませんが。
情報が足らんよ
聴力の障害は、情報障害です。毎日の生活や自分の住んでいる地域の出来事、隣近所の話、親兄弟の話とか、近親者の話題とか、そういう身近な情報はまったく分かりません。聞えないという障害をもっているからです。
情報は毎日毎日足りませんよ。それは社会が聞える人を中心に成り立っているからです。
情報が足りないということは同時に知識の不足と社会的な損失が大きいと言えます。
例えば、車内放送(事故でどうなっているのか、いつ復旧するのか。切符はちゃんと買ってるぞ)、店内案内放送(スーパーで午後5時頃から値引き商品の案内、ボクには聞こえない。障害者だからと割引してもらってないぞ)、商品の説明(その商品の特徴や使い方、利用法など、高い買物を説明も受けないで買う人はまずいないでしょう)、災害時の情報(広報車で緊急広報、税金払ってるぞ、ボクも知る権利あるよ)、防火訓練(団地で消防署員が火災防火について説明、税金返せ、手話通訳付けろ、わからんよ)、観光バス(旅先で、一人でも乗れるが、観光案内のガイドさんの案内情報が入らない。乗りたくないね)、海外旅行(広告に現地日本人の日本語案内があります。これでは困るね。手話通訳者を連れて行くと、旅費に食事代に、聞こえる人より旅行費用が大きくかさむ、どうしたらいいかな)などなど。たくさんありますね。
結局のところ、情報があっても情報が伝わって来ない。現在の社会では、情報を流す側は情報を受ける側に聞えない人間がいるということへの配慮が欠けています。
私もいずれはホームヘルパーさんの厄介になる時が来るでしょう。選びたい介護業者に手話通訳の出来るヘルパーさんの準備が出来ているかと言いますと、大阪では数人しかおりません。どこの業者に頼めばいいか、そういう情報は業者のパンフレットにはほとんど載ってません。
聞えない者には手話の出来る介護者が是非必要です。話も通じないベテランのヘルパーさんに来て頂いても、相互のコミュニケーションが成り立たなければ信頼関係も生まれないし、果たして正しい介護が出来るかどうか。どこかが変な制度です。
中途障害者の悩みは深刻です
聴覚障害者には、生まれついての聴覚障害者と、中途障害の方がいます。
もともと聞こえない人は、生まれてからずっとそのような環境で暮らしてきているので、聴覚障害者同士で付き合うことが多く、あまり悩むことはないようです。意外に元気かも知れません。
しかし、中途障害、特に大人になってから聞こえなくなった場合は、今まで普通の生活を送って来たのがある日突然聞こえなくなるわけですから、生活全般の環境がガラッと変わってしまいます。聞こえる世界と聞こえない世界との間での落差が大きく、悩んでひきこもってしまうこともあります。
そんな場合に、ピアカウンセリングなどの相談できる場が必要なのですが、その存在すら知らないことが多い。情報不足をここでも感じます。
ピア大阪で活動して
ところで私は自分の障害については良く知っていますが、それ以外の障害についてはあまり知りませんでした。これは自分の障害のことだけでも大変だという利己的な考え方があったからかも知れませんが、ここピア大阪に来て、いろいろな障害をもつ人達や障害者団体、作業所の会誌などを読んでみて、障害者団体の発行物はその障害だけの情報ではなく、他の障害をもつ人達にも読んでもらうことも大事だと気付きました。みなさんのなかでニュースだとか会誌だとか発行していたら、同じ障害者向けだけでなく、違った障害者にも配布してほしい。これも貴重な情報であり、情報提供であると思います。そこからも仲間づくりの輪を拡げていってほしいと思っています。
一人で悩んでいないで
聴覚障害者は、身の回りのことは自分で出来るし、他人の手を借りず何とかやっていくことが多く、悩みがあっても一人で抱え込んでしまうことが多いようです。
自分でつまらない悩みだと決め付けてしまわずに、ぜひ相談に来てください。私にとっても勉強になりますから。生活援助の場として「ピア」があるのですから、言いたいこと、相談したいことはどんどんぶつけてほしい。もちろんプライバシーは守られています。
現在、大阪市内では聴覚障害のピアカウンセラーが少なく、相談できる場が足りないように感じます。もっと聴覚障害者が悩みを打ち明けられる場が増えることを願っています。